Client Guide

AI動画制作の前提ガイド
——「AIだからすぐできる」の誤解と、修正コストの仕組み

この資料は、AI動画制作をご依頼いただく皆さまと私たち制作チームが、同じ地図を見ながらプロジェクトを進めるためのものです。 AIで動画づくりは劇的に速く・安くなりました。それは事実です。ただし「何でも・いつでも・すぐ」ではありません。 どこが速くなり、どこに手間が残るのか。どの変更が安く済み、どの変更が「作り直し」になるのか。先にお伝えしておくことが、結果的にいちばん速くて安い進行につながります。

MAGIMO STUDIO 編 | 2026年7月版 | 印刷してそのままお使いいただけます

1. AI動画は「ガチャ」の束でできている

生成AIの仕事の実態

動画生成AIは、指示文(プロンプト)を渡すと数秒のカットを生成します。ここで大事なのは、 1回の生成で使える映像が出てくるとは限らない、ということです。 同じ指示でも毎回違う結果が出ます。手の指が6本になる、キャラの服が途中で変わる、意図と違う動きをする—— そうした「ハズレ」を含む複数回の生成の中から、使える1本を選び、必要なら指示を調整して引き直す。これがAI動画制作の実態です。

制作コストの基本式

生成コスト = カット数 × 1カットあたりの生成回数 × 生成単価
標準的な演出でも、選別のために1カットあたり数回は生成します。 AIが苦手な演出が入ると、この「生成回数」が2倍・3倍と跳ね上がります。 つまりお見積りは「何カットか」だけでなく「どんな演出か」で決まります

2. AIが苦手な演出——正直にお伝えします

2026年時点の主要モデル(Sora 2/Veo 3.1/Kling/Seedance 2.0 等)に共通する傾向

最新のAIは驚くほど進化しましたが、明確に苦手な演出があります。 私たちは受注時に必ずチェックし、苦手演出が含まれる場合は回避策(プロの技法)とセットでご提案します。

演出難易度なぜ難しいプロの対応
物の受け渡し・手渡し 手と物の接触、受け渡し前後で「同じ物」を保つことの両方が苦手。物が変形・消失しやすい 受け渡しの瞬間を映さないカット割り(渡す手→受け取った後)。実写映画でも使う省略技法です
3人以上が同時に動く 2人までは安定。3人以上で服装の入れ替わり・顔の混ざりが起きやすい カットを分けて同時に動く人数を抑える。群衆は引き・ボケで処理
手・指の細かい演技 手指はAIが最も破綻しやすい部位。楽器演奏・タイピングは特に困難 手元を映さないフレーミング、または該当カットに生成回数を厚く配分
画面内の文字(看板・商品名等) 編集で解決 生成すると文字化けする(日本語は特に) 生成映像には文字を入れず、編集工程で正確な文字を合成。だから文字修正は安い
実在商品の正確な再現 ロゴ・パッケージ・形状を正確に保てない 商品は実写素材・3Dで用意し、AI映像と合成
キャラの一貫性(カット間) カットごとに顔・服装が微妙に変わりやすい キャラ設定資料(参照画像)を作り、全カットで同じ参照を使用。キャラデザの事前確定が必須
10秒を超える長回し 長くなるほど後半で画が崩れやすい 5〜10秒で分割生成し、編集で繋いで長回しに見せる
高速アクション・ダンス 速い動きは破綻・残像が出やすく、振り付けの指定も難しい 短いカットに割り、動きの頂点を編集で繋ぐ
高速で交互に切り替わる演出 編集で解決 1本の生成内で高速切替を指示すると破綻する これは生成ではなく編集の仕事。素材を個別に生成し、編集で高速カットを構成(追加コストは編集工数のみ)

ポイントは、苦手演出の多くに映像業界で昔から使われてきた回避策があることです。 「AIで無理やり生成する」のではなく「カット割りと編集で解決する」——ここが、プロンプトを打つだけの制作と、映像のプロがAIを使う制作の違いです。

3. 「その修正、安いですか?高いですか?」

変更コストの仕組み——手描きの修正とはルールが違います

従来のアニメ・実写では「一部だけ直す」ことができました。AI動画では事情が異なります。 キャラの見た目や画風は、全カットの映像に「焼き込まれて」いるため、後から変えるには該当する全カットを生成し直すしかありません。 部分修正という概念がなく、変更ではなく作り直しになるのです。

変更の内容影響範囲コスト感
キャラクターデザイン・見た目の変更 全カット再生成+設定資料・絵コンテ改訂 作り直し相当
画風・トンマナ全体の変更 全カット再生成+ルック開発やり直し 作り直し相当
特定カットの演技・動きの修正 該当カットのみ再生成
カットの追加 追加分の生成+一貫性確認
ナレーション・BGMの差し替え 音声・編集工程のみ(再生成なし)
テロップ・字幕の文字修正 編集工程のみ(再生成なし)
全体尺の微調整(±数秒) 編集で吸収できれば再生成なし 低〜中

だからこそ私たちは、制作フローに「承認ゲート」を設けています。 ゲートまでは何度でも方向修正できます。ゲートを越えた後の変更は、越えた工程のやり直しになります。

① 企画・構成目的・ターゲット確定
🔑 ゲート1キャラ・画風の承認
② 絵コンテカット割り・演出設計
🔑 ゲート2絵コンテの承認
③ テスト生成ルック(画の質感)確認
🔑 ゲート3ルックの承認
④ 本生成全カット生成・選別
⑤ 編集・仕上げテロップ・音・色調整

※ たとえば「キャラの印象を変えたい」はゲート1まではデザイン修正のみ(低コスト)、④以降では全カット再生成(作り直し相当)になります。

4. スムーズに(=安く速く)進めるための5つのお願い

  1. キャラクター・画風は最初に決め切る —— 参考画像・既存キャラ・「こんな雰囲気」の実例を企画段階でご共有ください。ゲート1が最重要です。
  2. 絵コンテ段階でしっかり悩む —— 絵コンテへの修正は安く、映像への修正は高い。違和感は絵コンテのうちにすべてお出しください。
  3. 修正指示は「どのカットの・何秒あたりの・何を・どうしたい」で —— 「なんかいい感じに」は生成AIには通じず、試行回数(=費用)が増えます。
  4. 修正はまとめて —— 1件ずつの逐次修正より、ラウンド単位でまとめていただくほうが再生成を最小化できます。
  5. 文字・ナレーションは最後まで変えられます —— テロップや音は編集対応なので、そこは安心して後から詰めましょう。逆に映像に関わる変更ほど早めに。

5. まとめ——AIは「魔法」ではなく「高速な職人」

AIは、従来数週間かかった映像を数日で形にします。ただしそれは、絵コンテ・カット割り・参照資料・編集という 映像制作の骨格があってこそです。骨格を飛ばして生成だけ回すと、ガチャの試行回数が膨らみ、 かえって高く・遅く・粗くなります。

「この演出はAIでどのくらい大変?」「この変更はいくらかかる?」——迷ったら、いつでもお聞きください。 正直にお答えすることが、私たちの品質管理だと考えています。

演出の難易度、その場で試算できます

本ガイドの内容をツール化した「演出難易度チェッカー」では、 企画に含まれる演出をチェックするだけで、難易度ランク・想定生成回数・変更の影響範囲を試算できます。 お打ち合わせの場でご一緒に確認するのもおすすめです。

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